Something BlueVol.22 〜ためらわない、迷わない〜

 夏休みだから、と、雅迪くんが帰ってきた。
 しかも髪の毛を金髪にして。
 おいおい〜、大学生活を満喫しすぎだぞ、とあたしは苦言を呈しておいた。
 「だって、すっげー楽しいんだよ」
 念願の一人暮らし、大学生としての毎日、彼は普通にしていても常に笑顔であった。あたしの大学生活はそこまで楽しかったかなぁ、と思い返してしまいたくなるけれど。
 だが、あたしにはまず聞かねばならないことがあった。遠距離恋愛のその後。
 「それで、例の彼女とは?」
 彼は照れくさそうに笑った。
 「終わった」
 「終わったのか!」
 「うん。わりとあっさり。やっぱダメだったよ。今は向こうで彼女できたし」
 「またか!」
 高校を卒業して、頑張って続けようとした遠距離恋愛が駄目になったのは、彼には悪いが予想通りだ。でももう次の彼女ができるとは……まったく彼は、立ち直りが早すぎる。
 そしてまた、彼は新たなる彼女との未来を夢見ている。遊びでつきあっているわけじゃないのに、いつも真剣なのに、彼は何故長続きしないんだろう。
 あまりに立ち直りが早すぎるからかもしれない。

 過去の恋愛から何か学んだことはありますか?
 「無理しないこと。相手に合わせすぎて自分がなくなりそうになっちゃうから」
 そう答えたのは、自分から告白してしまうと長続きしないことを自覚した万里子さん。はじめはそんな気がなくとも、向こうから押しに押されてつきあいはじめて5年の彼氏とはうまくいっているらしい。
 が、常々「自分というものがないから」とおっしゃる香さんは、すべてはダンナの言う通り、と結婚生活も3年目だが、しあわせだそうだ。出張のたびに、「寂しいよー、早く帰って来てほしい」とわめいている。
 会うたびに彼氏が変わっていた靖子さんは、「わかったことは、私には合わない人だったの!」と一言で振り返る。
 ちょっと考えた由布子さんは、「過去って役に立つような立たないような。だって、相手は違うわけだから」といちばんもっともなことを言ってくれた。
 つまり、過去の恋愛は次の恋愛に直接役には立たないかもしれないけれど、自分自身の傾向は読み取れる、ということかもしれない。  成功例はたまたまかもしれないけれど、失敗例からは共通項が見える。失敗しないからといっていつでも成功するとはかぎらないんだけど、何かは見えてくるはず。
 繰り返す人々は、一生懸命なのだ。
 今度こそ運命の相手だと信じ、ほんのちょっとしたきっかけも逃すまいと。そしていつしか、どれが運命のサインなのかわからなくなってしまう。
 運命に出会う、それがまるで絶対の約束のように。
 だが、そんな“巡り会うべく決められた相手”はほんとうに存在するんだろうか。結果的にそう思える人たちは幸せだろうけど、世界中のすべての人間がそうなるとはかぎらない。感じられない、気づかない人々はいつまでも捜し求めなければいけないんだろうか、自分を責め続けなければいけないんだろうか。
 ありえないものを求め続けて。
 人間の細胞は4年間でいれかわるらしい。ならば愛する相手も4年で変わって何がおかしい、みたいな話もあったし。そのときどきで変わる自分自身に正直に、付き合う相手を選ぶのは理に適っているのかもしれない。
 運命の相手、ベターハーフ幻想はうまく心を切り替えることのできない不器用な人々の言い訳なのかもしれないのだから。
 だから、こうなったら雅迪くんには、いつも本気でありながら長続きしないキャラとしての一生を全うしてもらいたい。後ろを振り向かず、引きずらず、そしていつでも次を思って。
 まわりのすべてのことを気にしないで。
 だって、多分あたしは迷いながら過去を引きずって、後悔してばっかりだから。
 でもたまに意見するのは、年上だから許してね。

written by Koolin
ご感想は・・・E-mail:xmiwa@frafra.netまでどうぞ。